企業の海外進出をサポートする有資格者が増えてきた。ビッグ4のグループ会計事務所や独立系大手会計事務所が先行しており、その他の会計事務所は現地法人との提携により企業ニーズに応えている。こうした中、専ら“海外”でのサポートに特化したフェアコンサルティンググループ(グループ代表=伴仁公認会計士・税理士)が注目されている。業務品質の高さは業界内でも一目置かれ、最近では、政府系や同業者からの依頼も増えている。元業界紙編集長でレックスアドバイザーズディレクターの宮口貴志がフェアコンサルティングのサービスの強さの秘密に迫った。
※インタビューは2012年に行ったものです。
「フェア」には国家資格者としての理念込める
・・・メーンの仕事が企業の海外進出や国際税務に特化した会計事務所系コンサルティング会社というのは非常に珍しいですね。
伴 :大手監査法人を退職後、事務所を設立したときに現在のパートナーの細田明先生と伊藤雄二先生、萩谷忠先生にお会いし、全員が国際税務に強い方だったので、自然とこういう形になったというのが正直なところです。私は監査法人で監査とIPO支援の経験しかありませんでした。ただ、日本経済の状況や企業の海外進出ニーズの高まりなどから、国際関係の依頼が多くなり、この分野に特化していきました。最初は、やれる仕事なら何でもやろうと、未経験の仕事でも断らずに受けていきました。
・・・闇が深いほど、暁は近いと言いますが、がむしゃらに頑張ったからこそ、方向性が明確になったわけですね。
伴 :「こんな仕事できますか」と聞かれたら、未経験でも可能性を考えて、とにかく解決策を模索し、結局、引き受けました。その姿勢は今も変わっていません。それがサービスの品質を磨くことであり、経験や既存の枠にとらわれないサービス提供が出来る源泉になっています。
・・・国際業務に強いという現在の形が出来上がったのは何時ごろですか。
伴 :2年前ですね。それまでは、一体感のない形で仕事をしていましたが、グループでサービスを提供していこうと、現在のような組織になりました。
・・・サービスを提供していくに当たって理念は?
伴 :会社名に入っている「フェア」です。フェアコンサルティングのフェアは、「公平」「正々堂々」という意味があります。われわれは、国家資格保有者でコンサルタントというバックボーンを大事に考えており、利害関係者の中に入り仕事をしていく上で、一部の人だけに都合の良いサービスでは駄目だと思っています。フェアな立場、第三者・中立とは言わないまでも、全員にとっていい形で取引が進む、もしくはスキームが進むようなことを目指してやっており、それで「フェア」と入れました。
・・・簡単なようで「フェア」の実践は難しいですよね。
伴 :だからこそ、仕事をする上でのベースになっているのです。スタッフ全員が「フェア」の言葉に立ち戻り、テクニック的なことも考えていきます。中には、名前だけで敬遠されるお客様もいます。特に税理士の仕事は、どれだけ税金を安くするのか、どれだけ得をさせてくれるのか、それだけを求めていらっしゃる方もいます。そのようなお客様にはきちんと当グループの理念・方針を説明し、仕事を受けるようにしています。そのため、あまり法スレスレを求めるお客様は、仕事を依頼してきません。
・・・お客様はどのような方が多いですか。
伴 :基本的には日系企業。海外でのビジネスサポートをメーンに依頼してきます。税金に関しては国際税務ですね。
・・・具体的に提供しているサービスを教えてください。
伴 :お客様の規模によって中身が違います。たとえば、超大手企業のお客様なら、移転価格税制、海外組織再編やクロスボーダーM&Aなどが多くなります。中堅企業のお客様ならば海外進出時のフルサポート。海外進出から、現地でのビジネスの進め方、人材採用など多岐に渡ります。これだけというのはありません。
公的機関や同業者からの依頼が増加
・・・最近は、同業者からの依頼も少なくないとお聞きしましたが。
伴 :中小企業も海外進出を考えていますので、会計人向けにそうしたセミナーを開催すると、多くの先生方が出席されます。出席された先生方から仕事の依頼を受けることが増えてきました。最近は、提携話もいただきます。先生方がわれわれに魅力を感じていただいている点に、1カ国だけでなくアジア全体を抑えていることが挙げられます。われわれに仕事を依頼すれば、アジアならどんなサービスも受けられる。もちろん、税金、会計、財務も一通りのことやってくれるという安心感があるのだと思います。
また最近は、金融機関や弁護士をはじめ、お客様からの紹介も多くなってきました。また政府、例えば香港貿易発展局、シンガポール経済企画庁などの各国の貿易や投資を扱っている部署からの仕事も増えています。
・・・公的な機関からの信頼度もアップしているわけですね。
伴 :公的機関のアドバイザーをはじめ、公的機関から出版物も発刊しています。こうした活動が評価されてきたものと思っています。
・・・他にない強み、特徴はどんなところですか。
伴 :われわれの特徴の一つに、すべて自前の直営店を設けサービスを提供していることが挙げられます。日本と海外の連携が緊密になることで、質の高いサービスがリーズナブルな価格で迅速に提供できます。こうした小回りの利く仕事が強みと言えます。
・・・小中規模企業の海外進出ではどのようなサポートをしていますか?
伴 :海外での会社設立も多いですが、駐在員の住む家を探す、さらにはお客様の事務所の大家さんとの交渉、工業団地との交渉など、お客様が望むことはできる限りサポートします。
・・・海外進出で中小企業が失敗するケースはどんなことですか。
伴 :よくある失敗は、現地に知り合いがいて全て任せるケースです。設立だけなら良いのですが、会社は箱だけ作って終わりではありません。ビジネスを始めることを目的にしたら、色んなことを考えなくてはいけません。中国進出する企業なら、会社設立というパーツだけを知り合いのコンサルタントにお願いするのは決して無謀ではありませんが、その他をすべて自分でやろうというのはほぼ不可能です。よっぽどの人脈が有れば別ですが、それでもかなりの時間がかかります。
・・・機会損失も大きいわけですね。
伴 :なので、海外進出した企業が困らないように、また海外企業に負けないようなサポートをさせていただいております。
・・・大手監査法人系の会計事務所も同様のサービスを提供していますが、違いはなんですか?
伴 :一体感ですね。国内外の拠点はすべて直営店です。そのため、日ごろからの情報交換や共同事業が非常に多い。仕事内容からしても一体感があるのです。お客様から見たらワンストップになりますし、会社の中から見たら一枚岩ってところでしょうか。
・・・ビッグ4になると規模からして、業務の分担が明確にされていますからね。
伴 :ビッグ4レベルになれば、国内と海外では資本関係も違いますから、スタッフ間では、気軽にお客様のご質問の回答作成をお願いすることができないことも少なくありません。一方で弊社は規模が小さく、言ってしまえば支店は身内なので、「大変だけど頼むよ」でやってしまいます。そこは全然違いますし、私は強みだと思っています。あと、これはあまり言いたくないのですが弊社の方が安いです。
・・・大手では人件費など、経費がかなり報酬に上乗せされますからね。
伴 :われわれは誰でも出来る仕事はなるべくリーズナブルな価格でやらせていただきます。メーカーの発想です。会社の設立など典型的な仕事は、努力してコストを下げます。しかし、弊社しか持っていないような高付加価値サービスは、それなりの報酬をいただきます。この戦略に変えてから明らかにお客様の数が増えました。
・・・何でもかんでも安ければ良いという問題ではありませんよね。マーケットに適した価格があります。そのバランスが、さらによいサービスを生んでいきます。
伴 :価値の高低はしっかりさせていきたいと思っています。ただ、われわれは無形の物を売っていますし、いきなり初めて来たお客様に分かってもらうのは現実的に難しい。付き合っていく中でサービスの価値を理解してもらうように努力しています。ただ、よっぽど困っている人は、いきなり高い報酬を払ってくれますがね。
結局のところ、われわれが未熟なのです。自分たちの価値を伝えきれていないから、すぐに高い報酬の仕事をいただけない。付き合ってからしばらく経たないと本当のところを伝えきれないから、分かっていただくまで我慢だと思っています。そして、この時間はお客様とわれわれの両方が育つ時間とも考えています。
小回りが利いたサービスを提供
・・・ビッグ4の良さと違う、フェアコンサルティングの良さを教えてください。
伴 :大手に比べて敷居が低く、小回りが利く点だと思います。すでに説明しましたが、国内外の拠点は身内ですから、突然の些細な質問に対しても、海外に問い合わせて聞けます。大手は、そう簡単ではありません。
・・・サービス開始当初と最近では顧客ニーズが変わってきましたか。
伴 :顧客ニーズはほとんど国際税務と海外進出のサポートなので変わりません。売上の中身を見てもそうなっています。売れているサービスを見ていくと、お客様が弊社に求めている価値が一目瞭然です。仕事量は何倍も増えていますが、実際に手掛ける仕事自体はあまり変わっていません。
・・・それにしてもすごいスピードで拠点を増やしていますね。
伴 :それをやらないとお客様のニーズに応えられませんから。また、ライバルとの競争にも勝っていけません。
最近は、弊社と同じようなコンセプトの同業者の方が増えつつあります。直営店でやっている方はあまりおられませんが、マーケットでは激しいぶつかり合いとなります。戦術的な側面からも、スピードが大事だと思っています。
・・・海外進出するのは簡単ですが、ビジネスとして軌道に乗せるのは時間がかかるのではないですか。
伴 :そうですね。簡単ではありません。結局、我慢です。どこの国へ行っても後発ですから。ビジネスを軌道に乗せるには時間がかかります。他国で認知されて、お客さんが来るようになるには辛抱が必要です。またそれから契約に繋がるまでも時間がかかります。
・・・どれくらい我慢が必要ですかね?
伴 :やはり3年ぐらいないと単年で黒字を出すのは難しいと思います。われわれは、拠点の場所も建物もそれなりのものを選んでいますから、コストもかかっています。一般企業にも言えることですが、人の定着も大きな要素です。弊社のような特殊な専門性で仕事をしていると、他でもっと高く雇ってもらえます。なので、スタッフを採用し、育成しても引き抜かれたりして抜けてしまうケースも少なくありません。結局、われわれの仕事は、人に知識が蓄積するので、会社としてブランド力が高まっても、お客様も人についていくことがあり、そのバランスが難しい。その点、ビッグ4は凄いと思います。法人がブランドなので、人が辞めても、一定の業務品質を保ち、お客様も安定しています。報酬が高いと言われながらも、安心感を買ってもらっているのです。弊社としては、そこをリーズナブルなのに安心というブランドを作っていきたいです。
私が個人的にイメージしているのは、グローバルに展開されているホテル業です。たとえば、インターコンティネンタルホテルグループなどがそうです。どの国に行っても、インターコンティネンタルならインターコンティネンタルのサービスが受けられます。また、グループ(サービス)の中には、クラウンプラザもあり、ホリデイインもある。ホテルブランドによって、サービスの内容は異なりますが、どこに行っても業務品質が一定です。われわれも同じサービス業なので、どの国でもお客様に満足していただかないといけないと思っています。
・・・短期、中長期的な目標を教えて下さい。
伴 :短期的目標を、「外部」の目標と「内部」の目標とに分けると、「内部」の目標としては、何よりも人材育成です。良い人材を採用し、しっかりと経験を積んでもらい、お客様を感動させることのできる、人間力のあるコンサルタントになっていただくためのステージを用意していきたいと考えていいます。それと、「外部」の目標としては、アジアを面でしっかりサポートできる体制を作りたいと思っています。
長期の目標に関しては、あくまでも短期の延長線になりますね。何といっても、人が一番大事なので、教育であったり、メンバーの成長を促すシステムを提供し続けることのできる組織を作ることが目標です。
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